「声」
人の中にはいつでも
子どものままの自分がいて
いつも子どものままの目で
世界を眺めているという
私の中にも子どもがいて
小さなその子は 今でも
おかあさんが いちばんすき
秋の道に野菊が咲くと
手折って帰る間じゅう
その日世界で一番
幸せな子どもになる
お母さんの大好きな花だから
もう咲いてたの、かわいいねぇ、って
コップに挿して飾ってくれる
お母さんが見られるから
野菊を折って帰っても
母が飾らなくなって
おかあさんと呼びかけても
答えが返って来なくなって
私は野菊の咲く道から
遠くに離れ 大人になった
でも 今も
道に小さな野菊が咲くと
わたしの中のあの子が
目を輝かせて 手折ろうとする
わたしはポケットに手を入れて
嬉しそうに弾む声に
ただ 耳を澄ます
お母さん、お母さん
おかあさんだいすき



